安いからといって仕事を粗末にすると、賃金を損した上に自分の良心を損することになる

今日は、散髪に行ってきました。近所の床屋さんに行ったのですが、実はその床屋さんに行くのは本当に久しぶり。最後に行ったのは新型コロナウイルスが広まるよりずっと前のことでした。おそらく3年近く経っているんじゃないかな。

理容室や美容院って、一度通わなくなって間が空いてしまうと、なんだか気まずくなって行きづらくなりませんか?私もしばらく迷っていたんですけれど、どうしても行きたくって。

それで「はじめてきました」みたいな顔をしてしれっと入店したのですが、カット台に着席して5分も経たないうちに「あれ?久しぶりですよね?」とバレてしまいました。ちゃんと覚えているものなんですね。ご無沙汰していた経緯を言い訳っぽく話してはみたものの、何のことはなく「いつでも来てくださいね」と温かい言葉を掛けていただき、勇気を出して再訪して本当によかったです。

ところで、どうしてそんなに行きたかったかという話なのですが、ここの床屋さんはとにかく仕事が丁寧なんですよ。ご夫婦で経営されていているのですが、特にご主人のほうは神経質すぎるんじゃないかと思うくらい丁寧。カットもシャンプーも顔そりも素晴らしく、散髪に行くたびに至福のひとときを味わえます。

しかも驚くべきことに、至福の時間をたっぷりと味わって料金はたったの2,900円(税込)。そりゃ5千円、1万円と払えば、同じようなクオリティのサービスを提供してくれる理容室はいくらでもあります。でもここは2,900円で信じられないくらい丁寧なサービスを提供してくれます。※ちなみに以前は2,600円でした。この数年で値上げしたようですがそれでも全然安い!

「もっと値上げしたほうがいいのでは?」とこちらが心配になるくらい素敵なお店なので、当然のように繁盛しています。予約制ではないので、店内の待合ソファーには大勢のお客さんが途切れることなく自分の順番を待っています。以前はお二人だけだったのですが、昨日はご夫婦以外にも若い女性の理容師さん(娘さん?)もいらっしゃったので、きっと手が回らないくらいお忙しくされているんでしょう。

しかもこの床屋さん、なんとオープンしてから30年になるんだそうです。何の業種でも、お店を30年間守り続けるのがどれだけ大変なことか。私には到底想像もつきませんが、きっと大変なご苦労もなさったんじゃないでしょうか。

私はここで髪を切っていただくたびに「プロ中のプロだなあ」とつくづく感じています。渡部昇一先生の『人生を創る言葉』で紹介されていた”ある大工”の話と通じるものがあるなあと。

それは、ナポレオン・ヒルやオグ・マンディーノを輩出したアメリカ成功哲学の元祖オリソン・マーデン博士が書いた本の中にある話だそうです。

ある裁判官が、自分の家の板塀を1ドル半の手間賃だけでこしらえてくれる人を探して広告を出しました。

報酬が安いので誰も受けたがらない中ようやく一人大工が見つかり「粗削りでざっとでいいのだよ。1ドル半しか出さないのだからね」と伝えたのですが、実際にできあがった板塀は実に丁寧な仕事で立派なものでした。

この大工がもう半ドル要求するに違いないと思った裁判官が「いくら念を入れても1ドル半しか払わないよ」というと、大工はそれで構わないというのです。

「こんなに手間をかけて損ではないか」といぶかしがる裁判官に対し、大工は答えました。

「損は損かもしれませんが、安いからといって仕事を粗末にすると、賃金を損した上に、自分の良心を損しなければなりません。大工として仕事する以上、仕事に精魂打ち込んで、自分でよくできたと満足しないと私の気が済みません。賃金が安いからといって、いい加減な仕事をすると、賃金を損した上に、私の性根まで損しますのでね」

大工の仕事に感心した裁判官はその後、裁判所を建てるときに、最も信用ある大工としてこの者を推薦したといいます。

最後の最後までハサミを取り直して繊細に仕上げてくださるご主人の姿に私は、この大工と同じプロ意識を感じるんです。きっと30年前にお店を出したころは、今のように繁盛はしていなかったはず。ひとつひとつの丁寧な仕事の積み重ねが絶対の信頼を獲得し、人気店を作り上げたのだと思います。

久しぶりに訪問して改めてこんなに素敵な床屋さんに出会えた幸せを噛み締めました。そして私も、ご夫婦のようなプロ中のプロを目指して精進したいと想いを強くしました。