



今回ご紹介するのは、渡部昇一著『人生を創る言葉』。
『人生を創る言葉』は、上智大学名誉教授の渡部昇一先生が書いた名言集です。
古今東西の偉人たちが残した名言とその人物、背景のエピソードが収録されています。
帯にある通り、全国長者番付で2度日本一に輝いた大実業家 斎藤一人さんが「7回読みな」と薦めた本であり、2005年の初版から何度も重版され、現在でも多くの読者に支持されています。
渡部昇一『人生を創る言葉』
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戦前の日本人を育んだ歴史と伝統の息吹を感じる名著
『人生を創る言葉』には、世界中の90人近い偉人の名言と人物、名言の背景にあるエピソードや渡部先生による解説がテーマごとに収められています。
なかには日本人なら誰もが知っているであろう偉人中の偉人たちの言葉やエピソードも。
リンカーン、吉田松陰、コロンブス、親鸞聖人、伊藤博文、武田信玄、徳川家康、ナポレオン、ベートーヴェン、宮本武蔵、徳川吉宗、ダーウィン、エジソン、アインシュタイン、大隈重信、ロックフェラー、新渡戸稲造…。国や分野に隔たりなく、多種多様な分野の偉人が取り上げられています。
珠玉の名言を選び『人生を創る言葉』を編んだのは、上智大学名誉教授の渡部昇一先生です。渡部先生は、ご専門の英語学だけでなく、歴史や哲学、人生論などの幅広い評論を残し、多くの人々に影響を与え続けています。
実は『人生を創る言葉』には底本と呼べるような本が存在します。それが、渡部先生が少年時代に読んでいた講談社の雑誌『キング』についていた付録の小冊子です。現在では知る人も少ない雑誌ですが、戦前の日本に登場した最初の100万部雑誌であり、国民の誰もが愛読する雑誌として、当時の人々の生き方や思想に大きな影響を与えました。
そんな国民雑誌キングの新年号には必ず、150ページ前後の小冊子が付録としてついてきたそうです。ただし付録といっても現代のような化粧品やファッション小物ではありません。たとえば「偉人は斯く教へる」「絵話世間学」「考えよ!そして偉くなれ」といった骨太な読み物でした。地方の片田舎の人間から都心の名家良家の人間まで、みな同じ講談社の読み物で教養を得ていたといいます。
講談社の読み物に書かれていたのは「個々人がそれぞれに志を立てて、それぞれの道で偉くなれ」という教えでした。これは、福沢諭吉が『学問のすすめ』を書き、中村正直が『西国立志編』を訳したのと同じ精神です。明治の開国以来、文明国を目指す日本にはこうした個人主義的な考え方がたしかにありました。多くの日本人が、福沢諭吉や中村敬宇が説いた人生論を至上の生き方として受け留めていたのです。
ところが戦争によって全体主義に入り込み、「出世する」ということが非常にいやらしい意味を持つようになってしまいました。いまでこそ当たり前のように感じられる「個々人がそれぞれの道で志を遂げることはいいことだ」という雰囲気は、実はごく最近になってようやく日本人が取り戻しつつある考え方だったんですね。
渡部先生はおっしゃいます。昨今の青少年には、人生に対する向き合い方・進み方を教えてくれる人がいない。ニートは、本当に可哀そうな若者たちであると。
先行き不透明な人生に、我々がどのように対峙してきたか、それを披瀝することで、現代の青少年たちにも刺激やヒントを与えることができるのではないか、後悔のない人生を歩む助けとなるのではないか。そう思うのである。
渡部昇一先生と”人間学を探求する出版社”である致知出版社が力を合わせて現代に復刻した名著、それが『人生を創る言葉』です。
「自分はどのように生きていけばいいのか?」「幸せとは何なのか?」そんな風に将来に不安を抱える人に、ぜひ手に取ってみていただきたいです。
あなたの人生を輝かせる素敵な言葉と出会えることを願っています。
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さて、ここからは『人生を創る言葉』を読んで私がとくに心を動かされた、偉人たちの生き方の秘訣を3つほどご紹介します。
購入を迷っている方に、どんなエピソードが書かれているのか雰囲気を感じていただけたらうれしいです。
※ご紹介する各エピソードはそれぞれ2~3ページの分量がありますが、ここでは要点だけを取り上げています
正直であることが、成功を引き寄せる
『人生を創る言葉』を読んで、私が一番「なるほど」と納得させられたこと、それは
正直であることが、成功を引き寄せる
ということです。
“正直”という言葉は、私たちは子供のころから学校や家庭で繰り返し聞かされてきた道徳のはずです。
ところが、いつも正直を実践している人ははたしてどれくらいいるでしょうか?
企業の不祥事、政治家の収賄、芸能人のスキャンダル…。どれもこれも正直を欠いたために起こった失敗ばかりですよね。
言うは易く行うは難しで、常に正直でいることは覚悟がなければできないことだと思います。
だからこそ、正直を貫く人は成功を引き寄せるのです。
『人生を創る言葉』の中でも、多くの偉人の正直がために成功した話がいくつも紹介されています。
江原素六(えばらそろく)
麻布中学を創立した明治の教育家 江原素六は、貧乏氏族の家に生まれ、幼いころは家計を助けるために楊枝を削って売り歩いていました。
他の者が楊枝を売るのに手間取る中、素六の楊枝はいつもすぐに売り切れました。なぜかというと、素六は出来の良い楊枝、中くらいの楊枝、出来の悪い楊枝をそれぞれ束にして、買い手に正直に伝えていたから。
当時は、外側に出来の良い楊枝を並べ、出来の悪い楊枝は内側に隠してしまうのが当たり前だったので、正直者の素六は信頼を得ることができました。
ある大工
別の記事の中でも紹介した”ある大工”は、「ざっとでいいから、1ドル半の手間賃だけで家の板塀を作ってほしい」という誰もやりたがらない仕事を引き受け、実に丁寧な仕事で立派な板塀を仕上げました。
そして「こんなに手間をかけて損ではないか」といぶかしがる依頼主の裁判官に対し、こう答えました。
「損は損かもしれませんが、安いからといって仕事を粗末にすると、賃金を損した上に、自分の良心を損しなければなりません。大工として仕事する以上、仕事に精魂打ち込んで、自分でよくできたと満足しないと私の気が済みません。賃金が安いからといって、いい加減な仕事をすると、賃金を損した上に、私の性根まで損しますのでね」
大工の仕事に感心した裁判官はその後、裁判所を建てるときに、最も信用ある大工としてこの者を推薦したといいます。
マクドナルド
貧農の子に生まれ、労働党出身の初のイギリス首相になったラムゼイ・マクドナルドは、大英帝国の総理大臣になっても地下鉄で通勤をしていました。
役所の自動車もありましたが、「悪事の多くは美名に隠れて行われるものだから」と、たとえ通勤であっても私用で使うことはありませんでした。
マクドナルドとは敵対勢力である保守党に属していたロンドンの富豪グラントはこの言葉を聞いて感服し、「このような立派な総理大臣に精一杯働いてもらえるようにするのは国民の義務だ」と一台の高級自動車をマクドナルドに寄付したといいます。
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本当に偉い人はどこまでも謙虚である
もうひとつ、『人生を創る言葉』を読んでいて強く感じたのが、
成功者には謙虚な人が実に多い
ということです。
中途半端にお金や名声を持っている人の中には偉ぶっている人も目立ちますが、人格も伴ってはじめて偉人と呼ばれるようになるのかもしれません。
リンカーン
リンカーンといえば最も有名なアメリカ大統領のひとりですが、人格者としても名高い人物でした。
ある日秘書がホワイトハウスを訪ねると、廊下の片隅で靴を磨いている男がいました。秘書は気にせず通り過ぎようとするのですが、あることに気づき非常に驚きました。
しきりに靴を磨いていたのがリンカーンだったからです。
「大統領の身分でそんなことをするのを人に見られては具合が悪い」という秘書に対し、リンカーンはニコニコしながらこたえました。
ほう、靴磨きは恥ずかしいことなのかね、ジェームズ君。それは違っていると思うな。大統領も靴磨きも、同じく世のため人のために働くものだ。世の中に卑しい仕事というものはないはずだ。ただ心の卑しい人はいるものだがね
南北戦争に勝って奴隷解放を行い、アメリカという大国を統一した大統領が、人間的にも偉大であったことがうかがえる素敵なエピソードですね。
フォード
世界の自動車王と呼ばれ、わずか二十数年のうちに世界一の富豪となったアメリカの実業家ヘンリー・フォードは、非常に簡素なライフスタイルを送る人として知られました。
大富豪になってからようやく建てた邸宅は、周囲から「いくらなんでも少しみすぼらしいのでは?」といわれるほどささやかな家でした。
実業家にとって肥満がステータスシンボルだった時代、贅沢をしようと思えばいくらでもできたはずですが、フォードは少食で痩せていて、70歳近くになってもピンピン働いていたそうです。
そんなフォードの家のストーブの上には、こんな言葉が彫られていました。
自分で薪を割れ、二重に温まる
ファラデー
イギリスの大物理学者マイケル・ファラデーは、数えきれないほどの賞牌や学位上の名誉を受けた人でしたが、それを少しも自慢することがありませんでした。
死後に関しても、偉い人が葬られるようなウェストミンスター寺院ではなく、「普通の人の墓地に普通の人と共に眠りたい」と望んでいたそうです。
そんなファラデーの思想がよくあらわれている言葉が、現代に残されています。
あるとき、一人の母親の涙を試験管に入れて、学生にこう教えました。
母親の涙も科学的に分析すれば、ただ少量の水分と塩分である。しかし、慈母の頬を流れるその涙には、この水と塩分の他に化学でも分析し得ざる尊い深い愛情がこもっていることを知らねばならない
—
話は変わるのですが、偉人たちの話を読んでいて、一度あるお寿司屋さんでプライベートのビートたけしさんをお見かけしたときのことを思い出しました。
お店に入ってきて奥の個室へ行く前に、わざとほかのお客さんにもわかるようにカウンター前で店主と仲良さげに談笑をして特別感を与えるサービス精神が非常に印象的でした。一方で一番下っ端のお弟子さんに対しても敬語で話しているのを見て、なんて謙虚な方なんだろうと感服したのを覚えています。
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よく学び、よく働くことは報恩である 成功の鍵は報恩にあり
よく学び、よく働くことは、天地万物や国家、両親の恩に報いることである
これも、私が『人生を創る言葉』を通して学んだことのひとつです。
頼山陽や吉田松陰の言葉はとくに響きました。
頼山陽
男児学ばざれば則ち已む。学ばば当に群を超ゆべし。安くんぞ奮発して志を立て、以て国恩に答え、以て父母を顕さざるべけんや
汝、草木と同じく朽ちんと欲するか
頼山陽
頼山陽が書いた『日本外史』は、完成までに20年以上の歳月を費やした大作で、明治維新のひとつの原動力となりました。
吉田松陰
凡そ人一日この世にあれば、一日の食を喰らい、一日の衣を着、一日の家に居る。なんぞ一日の学問、一日の事業に励まざらんや。(精進して天地万物への御恩を報じなければならない)
吉田松陰
吉田松陰が主宰した松下村塾は、長州藩を倒幕へと導いた革命家 高杉晋作や総理大臣の伊藤博文、山県有朋をはじめ、日本の近代化を担った多くの偉人を輩出しました。
—
『人生を創る言葉』を”7回読みな”と薦めている斎藤一人さんは、全国高額納税者番付で2003年から12年連続10位以内にランクインし、2度1位を獲得。発表を終えた2004年までに合計173億円(日本記録)を納税しました。しかもこれは事業所得のみで達成した記録で、土地や株式を除けば毎年日本一だったといわれています。
斎藤一人さんが、なぜ一切節税をせずに商売のみでここまで多くの税金を納めることができたのか?
それはひとりさんが「誰かが税金を納めなくちゃこの国は沈没してしまう。地球へ送り出してくれた神様に感謝して、この国のお役に立つんだ。俺がこの国を支えるんだ」と、普通の人よりも高い志と覚悟を持っていたからなのだと思います。土地や株を持たないのも「ハンデをつけたほうがおもしろいから」なのだとか。
大志を全うし世界を変えるのに必要な鍵は、”報恩”なのかもしれません。
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まとめ
この記事を書いている時点で、私はちょうど7回目に入ったところです。同じ本を何度も読んだら飽きるんじゃないかと思われるかもしれませんが、全然そんなことはなくて、むしろ読むたびに新しい発見があります。本当に読む価値のある名著というのは、そういうものなのかもしれませんね。
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